
ゲームニクスとは何か – 日本発、世界基準のものづくり法則 (幻冬舎新書 さ 3-1)
お勧め度:★★☆☆☆
ゲームニクスという言葉は著者であるサイトウ・アキヒロ氏が考え出した言葉です。ゲームの素晴らしさを体系立てることによって、学問とし、なぜ世の中の人が「はまる」のかを科学した結果が「ゲームニクス」という言葉だそうです。
ゲームというのは人を熱中させることにたいして異常に強い力をもっているというのは、客観的に考えても正しいことはわかると思います。そういったゲームの特徴を、「結果」から分析し、理論的に体系化させるというのは、次のヒット商品を作るときにも非常に役立つということはわかると思います。この本の68ページにその体系化されたものの概要図が書かれています。この図は、ゲーム業界でなくても、商品を作る人達にとっては、非常に有益なものであることは間違いありません。そういう意味では、この本は一見の価値があると思います。
しかしながら、著者はmixiやgoogle、そしてiPodまでもがゲームニクスに基づいているから、ヒットしているのだと半ば宗教じみた展開を見せてしまいます。本中に何度も出てくるDSに関しては、どれだけ売れているかという数字を持ってきます。
2007年度中には国内で2000万台の出荷は確実でしょう。
2000万台という数字はスケールが大きすぎて、今ひとつピンと来ないかもしれません。そこで携帯電話の普及台数と比較してみましょう。
総務省の発表によると、携帯電話の総加入者件数が、2007年3月末で約1億人となりました。ということは、なんとDSはそれだけで、日本の総携帯電話人口の5分の1にあたる出荷が記録されることになります!
携帯電話の総加入者数とDSの出荷台数を比べ、「DSはゲームニクス的に優れたUI(つまり良いUED)を持っている。DSは売れた。つまりゲームニクス的に優れているものは売れる」という持論をつなげるのですが、携帯電話の総加入者数とDSの出荷台数を単純に比較していることが、論理の流れを止めてしまい、眉唾理論に聞こえてしまいます。
また、DSは「お年寄にも使えるUI」ということでほめているのですが、スーパーマリオを得意気に遊ぶおじいさんを私は見たことがありません。むしろ、難しくてわからないと言うでしょう。しかしこの本では、スーパーマリオは、説明書を見なくても遊べるとほめちぎっています。理解ができません。そもそも、ゲームニクスでは、何が重要視され、何が軽視されても問題ないのかについて全く言及がありませんでした。著者にとっては明確な区切りがあるとは思うのですが、読者にとって、少なくとも私にはさっぱりわかりませんでした。強引にあとづけしたものにしか見えませんでした。
商品そのもの以外にも、人に面白いと思わせるためには工夫する点がいっぱいある、という主張には100%賛成しますし、68ページの図を見るだけでも777円の価値はあると思います。ただ、やはり私は、個人的にはこの本は好きになれませんでした。